2001年2月中旬、「e-ものづくり@岡谷」というイベントが長野県岡谷市で開催された。
岡谷では地域の小さな会社の後継者たちが「諏訪バーチャル工業団地」などの取り組みを重ねており、地域産業のIT化に積極的に取り組んでいる。この岡谷の若者たちが中心になり、中央道沿線の主要都市の若者たちに声をかけ、新たな地域間のネットワークを形成していこうというのである。私は「中央道沿線産業ネットワークの将来」と題するパネルディスカッションのコーディネーターをおおせつかったが、沿線の各地が頑張っている若者たちの発言は極めて興味深いものであった。
大橋俊夫氏(岡谷市)「インターネットを通じて新たな工業集積をつくる必要がある。力を結集して『新たな価値』をつくっていく。機は熟してきた。仕組みづくり、ビジョンづくり、その共有化が必要だ。地域の将来像を語っていくべき。われわれが切り開いている」
丹沢寛氏(甲府市)「元は電器店だった。環境問題から電気自動車に取り組む。ネットで岡谷を知り協力関係になった。岡谷は実に反応が良く、感動がある」
堀内ともき氏(岡谷市)「元々、東京の大手デザイン会社にいた。この地域との縁はなかった。展示会で長野のブースは賑やか。誘われて岡谷に定住した。何かが起こりそう。ワクワクする。地域のブランド化が必要では」
河西弘太郎氏(岡谷市)「CATVをやっているが、岡谷は97%の加入率。環境条件は整ってきた。ネットワークはコミュニティを創造するもの」
小池一義氏(飯田市)「飯田のパイだけでは行き詰まる。飯田になければ長野、日本、世界がある。ビジネスは対等であるべき。それぞれの地域にそれなりのネットができている。その上をどうするか。地域同士がまとまることを期待する」
小泉光世氏(岡谷市)「行政の立場から、中央道沿線の地域間連携に関心を抱いている。行政のあり方も検討中」
新川雅之氏(東京多摩地域)「首都圏西部でネットワークをつくっている。コミュニティの創造には求心力が必要。岡谷はリーダーの大橋氏が難しいことをいっても、皆がついていくところが興味深い」
小口裕司氏(岡谷市)「この地域、何かあるとゴソゴソ集まり、ワイワイガヤガヤでフットワークが良い。ポテンシャルが高まり、新しいモノが生まれることを確信している。場をつくっていく『勇気』が必要。その基盤がようやく見えてきた」
わずか2時間ほどのディスカッションであったが、パネラーの方々は、口々に「可能性」と「希望」を語るのであった。
すでに5〜6年の試行錯誤を積み重ねてきた岡谷には、不思議なエネルギーが渦巻き、それを一つの焦点としてさらに新たな地域間ネットワークにまとめ上げようとしている。今回のディスカッションはそうしたことを深く感じさせるものでもあった。
新たな可能性に目覚めた若者たちは、地域に対する「思い」を共有し、果敢に試行錯誤を重ねているのである。何度もいうようにITは目的ではない。私たちの目標とすべきは「私たちが豊かで、希望に満ちた暮らしを可能にしていく」ことにあろう。
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